川沿いの道にある木が薄桃に染まり始めていく。
毎年毎年、この色がわたしを暗澹たる気持ちにさせる。
日が暮れかける道は、先ほどの客が言っていたように雨に打たれてまだ湿っていた。
今日は早番、明日は休み。携帯は相も変わらず音を立てない。今日、長い長いツアーから帰ってくると言っていたはずの恋人からも、全くメールが入る気配はない。
何でだか妙に足がしんどくて、タクシーを拾えばよかったかもしれないとちょっとだけ思った。そうすれば何も考えることなく、この憂鬱な並木道をやり過ごすことが出来る。
けれど、まっすぐ家に帰る気にもなれなくて、駅方面に出る橋へと曲がった。
高架の上を、真っ赤な電車が走り抜けていく。
「凪!」
耳になじんだ声。
橋の向こうで、金髪のひょろっとした男が手を振っていた。
「おかえり、祐二」
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ツンデレラで思い出して探してみました。
何年か前にあの辺を舞台にした話を書きかけていたなぁと思い出して、フォルダ全検索したらそれっぽいのが見つかったので空けたらビンゴ!でした。
メモには、「橋の向こうに家があって、その反対側が仕事場で、なんていうの、花畑と三途の川、みたいな」と。
(私のメモは大体こんな抽象的なあれなんですよ)
もう一回チャレンジしてみようかなぁ。
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